※30連発企画より抜粋 切ない、なんて思いたくなかった。 「グリーンくん、これから部活?」 「がんばってね!」 「おう、サンキュ」 「「グリーンくん、部活行こ〜」」 「お、早ぇーなおまえら。すげー、やる気満々だなー」 「ねぇグリーンくぅん。だぁれ、あれぇ?」 「ん、マネの後輩。ちょっと待ってろー」 放課後、特進クラスの友だちを呼びに来たらなんだか久々にグリーンの姿を目にした。 きゃいきゃいと騒ぐ女子たちに囲まれ、さらに外からもお呼びだしがかかっているグリーンはいかにも学年1のモテ男って感じ。女の子たちの声のトーンがちがう。 後輩の女子マネ?すごいなぁ…わざわざ地位を利用してクラスまで訪ねてくるなんて。 私は彼女たちとは反対側のドアから、中をながめながらしみじみと考えた。 友だちが私を見つけてこちらにやってくる後ろで、バタバタとグリーンがロッカーを開けたり、部活の準備をしている。それを見るとでもなく見てたはずだった。 あ。…目が、あってしまった。グリーンの手が止まる。私も息を止めた。 刹那、時が止まったように長く感じた。 「…なまえ?」 「……」 「なまえ〜〜!」 「へ、あ!?」 「もー、何ぼーっとしてんの。待たせたのは私が悪いけどさ。ほら部活行くんでしょ?」 「あ、う、うん。ごめん」 ちょっとすねたみたいな友だちの後を追いながらふり返ると、もうグリーンは後輩のマネたちと、体育館に向かってしまっていた。 ……ばか、みたい。期待してもだめだって、散々言って聞かせたのに。私は胸元のシャツをぎゅっとつかんだ。 それでも動悸はおさまらなかった。 揺らぎ/1008
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