マツバさんと手をつなぐことは滅多にしないんだけど、つなぐと決まっていつも暖かい。 元々女子は冷え性が多いって聞くし、私も例に漏れず確実にそのなかのひとりだけど、私が冷たいのは差し引いたって、暖かい。 一見とてもクールで大人なマツバさんの体温が高いのがなんだか意外だったのを思い出して、私は思わず口元をゆるませてしまった。 「どうしたの?」 私の手を引いていた淡い金髪が揺れて、マツバさんの薄い目が不思議そうに私を見る。あわてて表情を引き締めようとしたら変な顔になってしまった。 「…にらめっこ?」 「なんでですか…」 思わず脱力した私から前に視線を戻しながら、マツバさんは笑う。暖かい冬の朝の、きらきらした光みたいな笑い方。 「だってなまえちゃん、そんな顔してるから」 「そんなって」 「にらめっこなら、僕のゲンガーは負け知らずだよ」 負け知らず…?でもゲンガーは最初から笑ってる気が、とか真面目に考えてしまってから、マツバさんがからかってることに気がついた。 「ちょっ、マツバさん!」 「本当に面白いね、なまえちゃんは」 「私で遊ばないでくださいって、いつも言ってますよね」 「ごめん、可愛いからついね」 「か……」 つい、じゃないでしょう!と言いたかったのに、勝手に火照った頬に恥ずかしさが増す。不自然に黙り込んだ私を、また振り返ったマツバさんが見て、また笑う。 「真っ赤だよ」 「いっ、言わなくていいです!」 いつも子供みたいな体温のマツバさんは、いつも大人の余裕を滴らせて目を細める。それにどぎまぎして恥ずかしくなった。 悔しいから、ぬるく暖まった手を引いてマツバさんより早く歩きだしたんだけど、3歩で追い付いたマツバさんに、4歩目で軽々と追い越されてしまう。 「なまえちゃんは嫌みたいだけど、誉めてるんだよ」 「……嬉しくないです」 「そうじゃなくて。可愛いよって」 かぁっとまた血がのぼって、今度は全身が熱くなった。 初めてぬるいと感じたマツバさんの手、大きくて骨張った大人の男のひとの手が、その熱に気づいたように、笑うように一瞬、強く握られる。 ※拍手お礼文 |