novel | ナノ

みんなでわいわいご飯を食べたあと、ポケモンたちも合わせてみんなで遊ぶために公園に来た。はじめはあんなに緊張してたのに、いつのまにかとても自然体な自分に気づいてびっくりする。

ヒトカゲはやっぱりリュウさんの連れていたポケモンにあこがれていたみたい。みんな次々とポケモンを出すなかでひときわ大きな影に、私の手を引いて一目散に近寄った。


「あ、わっ!ちょっとヒトカゲっ!」
「やあ、なまえちゃん。こっちは君のヒトカゲ?」


ちょっと不思議そうにヒトカゲを見つめる赤いポケモンのとなりで、リュウさんはにっこり笑ってくれる。

ご飯のときは、座席の関係もあってキャサリンちゃんとオードリーちゃん、それにショウタさんとはたくさん話したけど、リュウさんとは話せていない。

席が空いてないとわかったとき、なぜかリュウさんが名乗り出て、トオイくんをひっぱって別の席にいっちゃったから。

だからまだ他人の感じが抜けなくて、自然体だった身体が緊張してしまう。それを知ってか知らずか、リュウさんはごく自然に会話をリードしてくれた。


「あ…はい」
「バトルはしないって言っていたね」


言いながらヒトカゲに視線を合わせるように片膝をつくリュウさん。私もあわててしゃがみこみながらうなずいた。


「ヒトカゲ、君はバトルしてみたいのかな?」
「かーげ?」


今度はヒトカゲを見て確認するリュウさんの横顔はやさしくて、あいつ本当は怖いんだぜ、というショウタさんのことばが嘘みたい。

目を丸くしてまばたくヒトカゲは、まだバトル、ということばすらよくわからないのかもしれない。リュウさんが困ったように笑ったら、ふと赤いポケモンが片膝をついて身を屈めてきた。


「しゃも」
「そうだな。頼めるか?バシャーモ」
「しゃもしゃーも!」
「ははっ。じゃあ説明は頼んだ」


…すごい、このポケモンもリュウさんにそっくり。

ひざまずいてうなずくポケモンに、いつだったか迷子になった私をなぐさめてくれたマイナンを思い出した。あの子のやさしいところはトオイくんにそっくりで、本当はトオイくんのポケモンじゃなくても、きっと長いこといっしょにいたからこそ似てたんだろうな。



「…よし。じゃあ、やってみようか」


リュウさんとポケモンの様子を見ながらぼーっとそんなことを考えていたら、振り返ったリュウさんとばっちり目が合ってしまって思わずぎょっとした。


「えっ?」
「君、話聞いていなかったのか?バトルだよ」
「…えぇっ!?」
「ヒトカゲはきっと、やってみたいって言うよ。僕のバシャーモにあこがれているんだ、間違いないね」
「そっ…!」


そんなはずありません!と言えなかったのは、バシャーモと呼ばれたポケモンに「バトル」とは何ぞやの説明を受けたヒトカゲが、きらきらした強い目で振り返ってきたから。

はじめて見る表情に気圧された私を見て、リュウさんはまたにっこり笑った。
110414
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