novel | ナノ

トオイくんはよく分からない。男の子なんだけど、たまに女の子みたいに可愛いと思えるし、かと思えば突然男の子らしくなるし。

そして私もおかしい。トオイくんを、ラルースを知りたいと思うのは本当なのに、同時に怖い、嫌だと思うのも確かだった。

鬱々とした心に呼応するように、ここ最近降り続いている雨が視界を白く煙らせる。

雨が降ると外に出る気が失せるんだけど、部屋にこもっているのもそろそろ限界だった私たちが、ついに外に繰り出したのはちょうど二時間ほど前のこと。


「ヒトカゲ、大丈夫?」
「かげっ!」


管理塔近くのお気に入りの雑貨屋さんからの帰り道。へーき、と言うように胸を張ってしっぽをくるんと振ったヒトカゲは、拍子にその先の炎に落ちてきた雫にびっくりしたみたいに飛び跳ねた。

その様子が可愛くて、つい笑ってしまう。しっぽを守るように抱き抱えたヒトカゲを私が抱き上げた。

すこし広めの傘はヒトカゲと私が入っても十分なはずだけど、あっちへこっちへふらふらするヒトカゲを完全に庇いきるのは難しかったみたい。

重いってほど重くはないけど軽くもないヒトカゲを、買い物袋といっしょに抱きかかえて歩くのは無理だったし、雨足はわずかながら確実に強くなる。

ふと視線の先に、ピラミッド型の温室を見つけて、落ちた気分がすこし回復した。…うん、ちょっと雨宿りさせてもらおうかな。


「ヒトカゲ、ちょっと寄り道しちゃおうか!」
「かげかげ!」


しっぽのオレンジ色の炎が一瞬、ぼうっと青く火力を増した。変わらない好奇心旺盛さをちょっぴりうらやましく思いながら、私は歩みの先を変えた。

今度、あの雑貨屋さんでヒトカゲ用のちいさな赤い傘を買ってあげよう。

101219
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