novel | ナノ

ヒトカゲがプラスルとマイナンに支えてもらってよろよろとコンベアを歩いていく。

私とトオイくんはそんなポケモンたちの後ろに立ってそれを見守っているわけなんだけど、実を言うと微笑ましくとか、そんな心境じゃなかった。

家まで送るよと言ってくれたトオイくんは、まだ私が迷子になると思ってるのかもしれない。さっき破れたはずの沈黙がまた私たちを取り巻いている。

すごく気まずい。むしろ、さっきよりも気まずいかもしれない…。

ゆっくり流れるコンベアに乗っていても、やっぱり近所は近所。私の家が見えてきたところで、私は勇気を奮って沈黙を破った。


「…トオイくん、」
「なまえ、今日空いてる?」


私の振り絞った勇気は、当の本人に遮られてしまった。

トオイくんが声を発したことにも、その言葉にも、びっくりしてとくんと心臓が跳ねた。続けてぎゅっ、と心臓を押さえられたような痛みが走って、目を丸くする。

そのせいで二の句が告げないでいたら、トオイくんは急に焦りだした。


「あ、無理にとかじゃないから、忙しいなら別にいいんだ」
「ううん、」
「…えっと…うん?」
「大丈夫。空いてる、今日」


お互いに意味不明な独立詞ばかり使ってるのに、お互いにそれに気づかないまま会話が進んでいく。

あからさまにほっとしたらしいトオイくんが、ようやくわずかな笑顔を浮かべて私を見た。


「よかった。じゃあ、あの、また迎えに来るから」
「え、いつ?」
「朝ご飯が終わるころ…じゃなくてやっぱり、…いつもの、時間に」


家の前にはすでに3匹とも到着していて、結局うまく歩けなかったのか、しょんぼりしたヒトカゲをプラスルとマイナンが慰めてくれていた。

ゆるゆると昇っていく太陽が、ちょうどトオイくんの真後ろにあってまぶしい。

目を細めながら、私はうなずいた。

101207
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