novel | ナノ

ラルースに来てからようやく二週間が経つという日、私はいつもよりずっと早く目が覚めた。

妙にはっきりした頭で、ベッドにから身体を伸ばして、近くにある小窓のカーテンをぺろりとめくってみる。

清々しい朝の日差しのなか、楽しそうに鳥ポケモンが飛んでいく。ミルキーブルーの空。今日も1日、良い天気みたいだ。

まるで昼間みたいにばっちり目が覚めたおかげで二度寝しようという気にはならなくて、私は人生初の、朝のお散歩っていうものをしてみることにした。

もぞもぞと、パジャマ代わりのジャージから簡単な服に着替えて、親を起こさないようにドライヤーを使わずに、髪の毛はすこし濡らして手櫛で整える。…ちょっと跳ねてるけど…ま、いっか。

「っ!!!」

そっとドアを開いたところで、くんっと服の裾をひっぱられる感覚にぎょっとした。悪いことしてるわけじゃないのに、なんか、悪戯がお母さんにばれたときの子どもの気持ち。

「かげっ!」
「…ひ、ヒトカゲ…」

僕もつれてって、と言うように裾をつかんで、空いた片手をいっぱいに上げるヒトカゲに、私は胸を撫で下ろした。あぁ……びっくりした……。

「かげ?」
「何でもない。行こっか」
「かげかげ!」

首を振って笑ってみせたら、ヒトカゲはうれしそうに先手を切って歩き始める。この子と一緒にラルースを歩くのは初めてだったのを思い出して、私はあわてて後を追った。

101205

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テーマ「推しとの恋」
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