トオイくんが持ってきてくれたのは、ハイテク都市ラルースならではのデータベースだった。 「それ…?」 「うん、これが最新の居住者名簿なんだ。とりあえず…、見られる環境に行かないと」 トオイくんの指に挟まれてる居住者名簿、つまり薄っぺらい金属板をプラスチックでコーティングしたようなそれに、私は目を見張った。てっきり電話帳みたいな、分厚い本がくると思ったのに…。 「…どうかした?」 「え、あ、ううん何でもない…」 私、大変なところに引っ越して来ちゃったんだなぁって今更ながらに思ってたら、トオイくんにはぼんやりしてるのが伝わってしまったらしい。 「大丈夫。すぐ見つかるよ」 トオイくんは、さっきの困ったような笑顔じゃなく、私を安心させるように笑ってみせる。美少年ならではの、優しい日だまりみたいな微笑みだ。 「あ…あり」 「ぷら!」 「まーい!」 「うわっ!」 なんだかほっとして、お礼を言おうと思った矢先に、彼の背中にまたしてもタックルするプラスルとマイナンのおかげで、彼はよろける。 「…大丈夫…?」 「うん。ごめんね」 どうやらトオイくんはプラスルとマイナンにすごくすごく懐かれているみたい。しあわせそうな彼らを見ていたら、私も家で待ってるはずの子に無性に会いたくなった。 「…で…どこに行けば見られる、の…?」 「あ、そうだった。行こうか」 プラスルとマイナンに、人と話してる途中に飛び付くのは〜とかお説教してるトオイくんにそろそろと尋ねたら、はっとしたトオイくんはごめん、と照れ臭そうにして、それから先手を切って歩きだした。 101130 |