novel | ナノ

ハイテク都市ラルースシティって、本当にハイテクなんだ…。順調に流されながら、私はぼんやりと街を眺めた。

街中をびゅんびゅん飛びかう電子のブロック、のそのそ歩き回るロボットのなかにはホットドッグ。その上、……歩道という歩道が動く。

いま私が流されてるのはもちろん、その歩道に、だ。本来うまく跳び移りながら自由に移動するのだけど、私には無理だった。

ぴょんぴょんと、流れる歩道から歩道へ跳び移っていくちいさな女の子が、へたりこんだ私を不審気にじろじろ見ていく。それに力なく笑ってみせる元気も、助けを求める勇気も、私には残ってない。

公園、と書いてある分岐点で、女の子は別の道に跳び移った。

その、幼いながらに素晴らしい反射神経に惚れ惚れしながら見ていたら、彼女のお仲間らしい子どもがまわりからたくさん集まってきて、彼らは一斉に、私を見つめた。


「道の真ん中に座り込んで、だっせーの!」
「オトナのくせに恥ずかしくないのかよー」
「トオイ兄ちゃんに言い付けんぞ、変な女がいるって!」


それだけは勘弁してほしいなぁ、これから住む街なんだし、と頭の片隅でぼんやり思ったとき、ことん、と傍らに人の立つ気配がした。


「…大丈夫?」


そちらに顔を上げたら、心配そうに覗き込む、薄い水色がかった白い髪の男の子がいた。両肩に乗ったプラスルとマイナンも、彼とそっくりおんなじ心配そうな面持ちをして私を見ている。

薄氷が張ったような、かすかな水色の目に、私が映っている。真っ青な顔に見えたのはきっと、彼の瞳が青かったから……、そうに違いない。


「…えぇっと…?」
「あ、ごめんね。僕はトオイ」
「トー…!?」


トオイって…もしかしなくても、あの子たちがリアルタイムでついさっき言ってたトオイ兄ちゃん…!?

考えてることがわかったのか、さっきの声が聞こえてたらしいトオイくんは、心配そうな表情をゆるませて微笑んだ。


「大丈夫、あの子たちは悪い子たちじゃないよ」



101130

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