novel | ナノ

ポッドが作ったものにしては珍しく不味い料理が出てきたと思えば、台所はかなり乱れており、フライパンの隣におきっぱなしにしてある容器をよくみればそこには「重曹」とラベルに示されているではないか。本来小麦粉や片栗粉を使うところだったのを間違えてしまったのだろう。道理でムニエルが思わず顔をしかめるほど苦いわけだ。「寝室にいる」と言ったポッドの元へ行くと彼は私の化粧台に肘をつき、鏡をじっと見つめていた。

「ポッド、ちょっと大丈夫?」
「…あ?」
「キッチン汚いままだし材料間違ってたけど」
「え…ああ、わり。」


そして面と向かって会話を交わし気づいたのだが、やけにポッドの声が小さく活力に欠けているのだ。ためしに「ムニエル、めちゃくちゃまずかったもん」と呟いてみれば「ああ、わりいな」と謝るだけ。普段なら「なまえのクセに生意気言ってんじゃねえつーのッ」と罵倒されるところだろうが。

「どうしたの?」

近寄ってみると表情にまで活力がないし、よくみれば頬が赤くはないだろうか。ぺたりと額に手を乗せると案の定熱い。風邪をひいているのに無理して仕事に行ったのだろう、熱と疲れのダブルパンチでポッドはかなり弱っている。いつも隣にいるバオップがいないのは風邪をうつしてはならないという気遣いからだろう。

「何か食べた?」
「食ってねえー…」
「私が何か作ろうか」
「お前の料理なんか食べられたもんじゃねーよ」
「……食欲ないって素直に言ったらどうですか。それに言っときますけど重曹ムニエルも負けじと不味かったからね」
「あー…もうなんでもいいだろッ!」

唸り声をあげながらポッドは私の腰にうなだれキツく抱きついた。だめだこりゃ、風邪のせいで身体中が熱を持ってしまっているのがお互いの服を隔ててもわかってしまう。しかしあれだ。なんだかこんなに甘えたなポッドを見ていると変な気分になる。なんというか発言は素直ではないが…行動が気持ち悪い程素直だし…。いや、全く気持ち悪くなんて思っていない、むしろ可愛い。とこんなことを言われたらポッドは怒るだろうな。

「今日は寝よっかポッド」
「んー…」

寝間着に着替えポッドの隣に滑り込むと彼はすぐさま私を抱きすくめた。またキツく抱き締められ、額にポッドの吐息が触れる。しかし身体中が熱いしこの体温に触れていると自分の方が熱を出しているみたいだ。こりゃ私も寝込むことになるぞ。そう思う傍らこんなポッドはめったに見られないと考えてしまうし、体調が悪いにも関わらず私が食べる夕飯を作ってくれたポッドを思い浮かべると、どうも全く熱気の籠ったこの布団からもポッドの熱い腕の中からも抜け出すことなど出来ないのだった。


「ポッド、寂しかった?」
「別に」
「なに強がっちゃってんの?」
「そんなんじゃねえって」
「またまた。……ポッド、こっち向いてよ」

自分から密着した体を少し離してポッドの顔を覗き込む。熱い首筋に手をするりと這わせると「冷てえッ!」といってポッドは体を震わせた。ふわふわとした空間の中で私はどうも常識はずれな思考を働かせてしまったらしく、先程撫でた首に軽くキスをしてから唇をポッドのそれへと移し軽く啄んだ。試作品か何かの味見をしたのかポッドの唇は甘く、相変わらず容姿とは似合わぬキスの味と反射神経が鈍ったせいか半開きのままだった唇の間抜けさに思わず笑ってしまった。ポッドは不意打ちに驚いていたようで、目を真ん丸くして私をみつめていたが、すぐにそれはいつもの笑みへと変わった。

「へへ…今ので少し力ついたぜ」

いくら今日のポッドが母性本能を刺激するぐらい愛らしくても、なんだかんだでニカリと笑うこの無邪気な表情が一番好きだと思った。今のキスで力のついたようであるポッドは私の頭を少々乱暴に引き寄せると例のごとくといったように少々乱暴なキスをした。ああ、こんなんじゃ風邪をうつされること間違いなしだ。





相互記念として聖ちゃんへ贈ります。
20110516 B9




*****

びーちゃんから相互記念にといただきました…!

もうなんと表現したらいいのか…弱ったポッドくんたまらないです(>_<)*
ポッドくんって私のなかでは元気いっぱいで照れ屋さんでちょっと子どもっぽいイメージになってしまうんですが、びーちゃんのポッドくんは全然ちがうんですよね…ずばり一言で言えば、大人の男なんです←
大人っぽい魅力があるのに少年らしい元気ではちゃめちゃ?なところも残ってて…いつもきゅんきゅんさせていただいていたので、リクエストさせていただいたのですが…うわぁぁもう、びーちゃんのていねいな描写に照れまくりです!(笑)←
素敵な相互記念をありがとうございました。これからもよろしくお願いします!
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