novel | ナノ

夏休み企画より抜粋

※学パロ


「なぁ」
「あれ〜グリーンくん!」


部活の帰り道。 疲れたなぁ〜…。夕御飯は何だろう。今日はシュート練たくさんしたし、コロッケが食べたい気分だなぁとか考えてたら、いつの間にか私の隣にはグリーンくんがいた。

まだ比較的明るい帰り道に、部活着の私と同じような服を着たグリーンくん以外の人影はない。元々私が住む方向には、あんまり中学生がいないんだ。…あれ、グリーンくんってこっちだったっけな?隣の席になってからたくさん話すようになったけど、確か真反対側じゃなかったかな…気のせい?


「どうしたの〜?」
「…お前、背伸びた?」


てくてく歩きながら尋ねれば、尋ね返された。思わぬことを言われて思わず頭に手をやる。もちろんそんなんで分かるわけもないんだけど。


「……そうかなー?」
「ああ、ぜってー伸びた!」
「うーん」


断言するグリーンくんを見れば、そういえばグリーンくんの目線が、前より下にある気がしなくもない。……ほんとだ、伸びてる!バスケ部員にとって、これほど嬉しいことってない。最近牛乳を飲むようにしてたから、そのおかげかも!


「やった〜!」
「……ムカつく」
「へ!?…うわっ、ちょっとグリーンくんやめてよ、痛いっ!」


思わず両手で万歳をしようとしたとたんに、グリーンくんは私の頭に拳をあててぐりぐりしだした。攻撃は地味なのに…物凄く痛い。

何でこんな扱い受けなきゃいけないんだ、と涙目になりながら思ったら、急にグリーンくんは手を離して、何だか偉そうに言った。


「…やっぱ、お前をちぢませるより、オレが抜いたほうがぜってー早いな!」
「……抜く?」
「そ。オレはお前より10cm以上高くなってやる。それも中学卒業までに」
「えぇ!?あと二年だよ?」
「それだけあれば余裕」


勝手に決めつけたグリーンくんは、覚えてろよ!とどこかの悪役みたいなセリフを残して走っていく。それをぽかんと見送って、気付いたら家の前にいたことに気がついた。 漂ってくるのは大好きな揚げ物の香り。長かった日も徐々に短くなっていて、周りはもう薄暗い。ガタ、とキッチンの窓が開いて、お母さんが顔を覗かせた。聞いたぞ〜って顔。


「……彼氏?」
「ち、違うよっ!」


あわてて否定したけど顔が熱くて、暗くてよかったと思った。


「お母さん、今日はコロッケ?」
「ハズレ!唐揚げよ。お風呂先に入ってきなさい」
「はぁい…」


お母さんはそれきり何も尋ねては来なかったけど、湯船に浸かりながらグリーンくんの顔を思い浮かべた私がのぼせた理由なんて、きっとお見通しに違いなかった。

Thanks;揺らぎ
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