novel | ナノ

夏休み企画より抜粋

※学パロ


灼熱の見慣れないコンクリート道を、なまえとオレは歩いていた。


「あっついね〜…」
「まじ、ダルいな」
「でもあたしはこれから、青い世界に行くから涼しいんだよねー」
「あーそうだよな…くそ、オレも腹さえ痛くなきゃあ…」


今ごろは、その青い世界にいたっつーのに。言葉は言葉にならなかった。

先日の準決勝、オレは情けねーことに、食い過ぎたチキンに当たって、水着さえ着れなかった。

優勝候補だなんて騒がれながら、なんてザマだ。スタートまでのあの沈黙。飛び込むと肌をはじき、すべる青。すべてが好きなのに、今日は泳げねーのか…。

なまえもオレも、しばらく黙っていた。太陽が熱い。


「……見ててくれるんでしょ?」
「じゃなかったら何のために向かってんだよ、オレは」


あまりにもアホなことを言うからつい呆れたら、なまえは弱々しく笑った。

弱々しい?まさか、大の勝負好きのあいつが?…ないない、とオレは首を振った。きっと太陽がまぶしすぎて、そう見えただけだ。


「それもそっか。よし、じゃあ勝たないとね!」
「ったりめーだろ、オレがサポートでついてきてやったんだ、自己ベスト出さなきゃ承知しねぇ」
「あはは、ありがと、シリウス」


なまえが、ようやくこっちを見て笑った。オレはなぜかほっとする。ゆるりと、ちっとも涼しくない風が吹いて、なまえの短い髪が、太陽に透かされて輝いた。

Thanks;揺らぎ
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