novel | ナノ

夏休み企画より抜粋



「……は!?」
「だから、オレはシリウスだって。シリウス・ブラック。久しぶりだななまえ、元気そうで何よりだ」

私は絶句した。…やっぱり、そうなの?

ずっと昔に引っ越していった、隣に住んでた男の子と再会しました。でもその人は、まったくの別人になっていました……なんて、漫画か何かの話だと思ってたのに。

だってシリウスって言えば、まあ昔から顔だけは良かったけど、弟のレギュに比べると格段にバカで、おまけに意地悪でガキ大将。私はいつもやつに泣かされて、レギュに慰めてもらってた。そんなやつだった。

だから今さらになって、あんな学校中の女の子が惚れちゃうよーな紳士が、あのバカで意地悪でガキ大将なシリウスだったって聞かされても。

そんなの、詐欺だと思うわけで。

あの紳士の皮の影に、昔のガキ大将の顔を隠し持ってるんだ絶対。


「見てなさい、絶対あんたの化けの皮、剥がしてやるんだから!」


勝手に頭の中でそう解釈して、びっ、と人差し指を突き付けて言い放った私に一瞬、あっけにとられたようなシリウスは、次の瞬間、大爆笑し出した。

それこそ失礼千万の笑い方にむかっとした。ああほら、そこになんとなーく、隠れてる気がしない?昔のガキ大将。


「どうぞご自由に、レディ。オレは止めませんよ」


白々しいくらいきれいな一礼をして、わざわざバカがつくほど丁寧な言葉遣いで。

ひらひらといかにも挑発するように手を振って、呼び出した屋上から出てったシリウスに、私は歯噛みした。

見てなさいシリウス・ブラック!! …なんで昔の彼を取り戻すことにこんなに必死なのかなんて、考えてる暇も余裕も、私にはなかった。


Thanks;揺らぎ
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