novel | ナノ

夏休み企画より抜粋


「うわぁ、大きくなったねーバクフーン!」
「ぐわぁう」
「凄い、最後に見たときはまだマグマラシで、抱っこもしてあげてたのに…もう私より大きいね」
「ぐるるぅ…」


喉を鳴らして嬉しそうに擦り寄るバクフーンに、なまえは嬉しそうな歓声を上げた。

僕はワカバタウンの芝生の上で、そんな風に再会を喜ぶなまえとバクフーンみたいにはなれなくて、ぶすっとその様子を眺めてた。

その原因は一重に、相棒が僕よりでかくなったせいだ。僕だってこれでも成長してるのに、なまえがちっともそれに気付かないのは、相棒が僕より格段な変化を遂げてるせいに違いない。

そういうわけで、僕の機嫌はすこぶる悪かった。そんな時だった。


「わ、ちょ、ちょっと待ってバクフーン」
「ぐぁう」
「っきゃあ!」
「っ………なまえ!!おいバクフーン!」


僕は、一瞬我を失った。当然だと思ってほしいのは、誰だって男なら、目の前で好きな子が押し倒されたら我を失うだろ?

あわてて木陰から走りよれば、僕の言うことなんかちっとも聞かずに、なまえに甘えきってる相棒の下で、なまえが僕に助けを求めていた。

俄然やる気になった僕は、僕の相棒をどうにかなまえの上から退けることに成功した。


「お、もかったぁ。ありがとうヒビキくん」
「いや、僕のポケモンだし…ごめんね」
「ヒビキくんが謝ることじゃないよ」


ようやく立ち上がったなまえは、そう言って僕のだいすきな笑顔で笑った。それだけで、日向なのに陽だまりができたみたいだ。


「あ」


その笑顔に見とれていた僕に、こんな攻撃を察知する力はなかった。もし察知していても、防げる気はしなかったけど。

何かに気付いたみたいななまえは、数秒黙って僕を凝視した後、どうしたの、という質問に一言。


「ヒビキくん、もしかしていつの間にか、私より大きくなった?」


どうだバクフーン、僕だってまだ負けてないからな!

Thanks;揺らぎ
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