novel | ナノ

占いって当たらないものだって思ってた。

よくあることだと思うんだけど、いつからか、いい占いは信じて、悪い占いは信じないことにしてたから。

なのにまさかこんなに当たるなんて…、まるでだれかが未来の私のあとをぴったりつけていて、あぁこのひとはこんなだから、この星座の運勢はこうだ!なんて書いたとしか思えない。

それともこれは、今まで神さまを信じなかった罰なのかな…私は見事今月の12位に輝いた私のお星さまを恨んだ。だって、こんなのってないじゃないですか!


「ほんっとうにすみませんでした…!」
「いや、別にそれはいいですよ」
「でも、だけど、ケガさせてしまって…本来それ、私が受けるべきケガだったんです」
「ならなおさら、男の僕でよかったんです。女の子が顔にケガするなんてもっての他で……兄弟に怒られてしまいますから」


病院のベッドの上で土下座せんばかりの私。それを慰めるデントさんのほっぺには痛々しいくらい大きなガーゼが当てられ、そこにはじわりと血が滲んでいる。

お星さまと神様の加護を失ったらしい本日の私は、定期を忘れることに始まり、財布は失くすわ、学生証は落とすわ……挙げ句の果てに、街角の階段から落っこちた。

ジェットコースター苦手な私がそんな恐怖に耐えられるはずもなく、記憶はそこで途切れるのだけど…あとは想像すればすぐわかる。意識を取り戻したその部屋に、心配そうに私を見るケガ人がいたんだから。


「…私、今日すごく運の悪い日なんです」
「うんって…運勢のことですか?」


優しく聞き返してくれるデントさんの顔が見ていられなくて、私はうつむいてシーツのしわを見ながらうなずく。


「責任転嫁みたいに聞こえてしまうかもしれませんけど、朝からひどくて」
「例えば?」
「定期忘れたり、財布を落としたり…お弁当も忘れてしまって、お金もないのでお昼も食べていなくて…」
「なるほど…。それでふらふらして、落ちてしまったんですね、きっと」


デントさんはすごく優しい人だ。怒ったって、慰謝料を請求したっていい立場なのに、加害者のぐちぐちを聞いてくれる。

あまりに惨めで申し訳なくて泣けてきた。泣ける立場なんかじゃないのに。とにかくぐっと涙と嗚咽を堪えて、私は今度こそ両手をそろえて深々と頭を下げた。


「本当に、すみません…」
「いいんです、本当に、気にしないで。それより…えっと、なまえちゃん、でしたよね。お腹減ってませんか?」
「えっ?」


あまりに突拍子なく聞かれたから、思わず涙も引っ込んで、私は顔を上げてしまった。とたんに空腹を主張をはじめる私のお腹…ああ、今日は本当に本当に、厄日だ!

鳴り響いた私のお腹に、デントさんはにっこりした。ものすごく恥ずかしい。

真っ赤になる私のベッドに近づいてきたデントさんは、よくわからないけど手を差し出してきた。


「この近くに、とっておきの店があるんです」
「店…ですか?でも、」
「大丈夫です、僕に任せてください」


ためらって見上げた先で、デントさんは本日二度目の、優しい微笑みを浮かべた。


「今日、僕はすごく運の良い日なんです。だから」


その笑顔に知らず高鳴った鼓動を合図に、差し伸べられた手を思わず取っていた。

占いが本当に当たるのかどうか、それって、きちんと1日を終えてみなければわからないのかもしれない。

Thanks;xx
101222

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