こんなにも頑なな人間だったのかと、気落ちするよりも新しい発見に心が浮き立った。ついつい笑顔になってしまうのを抑えきれずにいたら、不信感をあらわにした顔で「俺真剣に話してるんだけど」とたしなめられた。
「ごめん、続けて」
達海の目を真正面から見つめ返して先を促したが、なにかを躊躇うように視線が外される。二人の間の食い違いは、もはや明らかであった。
「だから・・・お前が本気で言ってるってのは、もうわかったよ。でも、俺それには応えらんねーわ」
明確な拒絶の言葉。以前からジーノが伝えていた愛の言葉は、毎度のごとく受け流され、一笑に付され、直接的あるいは間接的に拒まれてきたのだが、今回も受け入れてもらえはしなかった。一人の人間にこれほどまで執着するということが、まるで自分のこととは思えなくて、やはり笑ってしまう。
声を立てずに笑うジーノの姿を、達海は静かに見ている。
「俺、お前が思ってるような人間じゃないよ」
それは諭すような口調であった。年下の、物分りの悪い困った人間に話しかける調子。
「そんなのタッツミーらしくない」
軽い笑いを口元に浮かべて発したのは、どうにか考えを改めて欲しいがための浅薄な台詞である。舌の上からするすると滑り落ちていくそれは、発しない方がマシなものだったということに、声にした後で気が付く。
「違うんだよ」
そう言ってこちらを見つめ返した達海の目を見て、ジーノはすうっと血の気が引く思いをした。笑みを浮かべていた口元が、かすかに歪む。自分の発する言葉が、今まで達海を傷つけ続けていたことに、ようやく気付いたところだ。








20110905
title by 虫喰い


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