「それでいいよ」 口に馴染んだ言葉をいつもの調子で言ったら、ジーノがキレた。 「たまには嫌だって言いなよ!」 あまりにも唐突でビックリした。「タッツミー今晩食事に行こう。何食べたい?フレンチにしようか」「それでいいよ」 たったこれだけの会話で。 「断ってほしいの?」 「違う!」 力いっぱい否定され、面倒くさい奴だなあと思ったら 「いま面倒くさいって思ったでしょ」 見透かされた。 「どうすればいいんだよ」 困って尋ねれば、キレてしまった言い訳をするように切なげな声を出す。 「違うんだよ、僕はタッツミーに自然なままでいてほしいんだ。好きなことをして、好きなものを食べて、ありのままでいてほしい。なのにまるで僕の好きなようにされて拒まないものだから…」 言い募るジーノの肩に手を置き、なだめるように軽く数度叩いた。 「わかった、わかった」 そう言ってやっただけでジーノは少し落ち着いたようで、かすかに笑顔をみせた。お前はわかってるのかなあ、そういう言葉が俺を縛っているっていうこと。 戻る |