※厨二病ジーノとタッツミー先生
※ただのおふざけです
それが世界の選択かとは、またちょっと設定が違います
※タイトルにはなんの意味もない








生徒が教科書の英文を読み上げるのを聞きながら机の列の間を歩いていると、窓際の生徒が心ここに在らずといった様子で校庭を見下ろしていた。頬杖をついているように見えるが、制服の袖からイヤフォンのコードがのぞいている。さりげなくそちらに足を向けて席の横に立つと、手にしていた教科書の面で軽く頭を叩いてやった。
「授業中だぞー」
教室中の視線が集中する。
「ほら、出せ。没収だ」
吉田というその生徒は、渋々とイヤフォンを外し、のろのろとズボンのポケットからiPodを取り出して机の上にのせた。
「後で職員室まで来るように」
俺の言葉に頷くでもなんでもなく、吉田はただうつむいている。俺の背後からは波のような笑い交じりのざわめきが起こっていたので、さっさと授業を再開しようとiPodを掴んで教卓に行きかけた時、吉田が震えた声で喋った。
「僕から…音楽を取り上げないで下さい」
「え?」
なにを言われたのか、とっさに理解しかねて振り返る。苦しげに歪められた顔があらぬ方向を見つめていた。
「大人の言うことは欺瞞だらけだ…。先生も、そんな汚い大人なんだ」
「え?うん?」
さっぱり話が見えてこないのに戸惑っていると、吉田は勢い良く席を立った。
「音楽だけは僕を裏切らない!僕には音楽が必要なんだ!」
叫ぶ吉田をぽかんと見ていた。他の生徒たちも俺と同じように静まり返って吉田に視線を注いでいるのは、見なくても空気でわかる。
吉田は俺と目が合うと、なぜかひるんだような表情を見せて微妙に視線を外した。
「僕は逃げない!」
再び吉田が叫び、教室は沈黙に包まれる。空気がどんどん冷えていくのが叫んでいる本人にも伝わったのか、その顔はこわばっていて若干焦っているようにも見えた。
「僕は逃げないんだああぁぁぁ!!」
沈黙に耐えかねたようにそう叫びながら、吉田はなぜか教室を走り去ってしまった。

「…王子まじカッケーわ」
しばしの沈黙の後で誰かがそう言い、どっと笑い声が起きた。










20101201



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