企画 | ナノ
Give me Chocolate.


「うー。堺さんのバカー…」


本人に聞かれたら殺されそうだけど、もう居ないから言ってみる。
だけど気休めにもならない。


椿くんが走り去ってからもう一時間は経ってる。
その間に色々…ありすぎて疲れた。
自業自得、なんだけど。


もうすっかり人気の無いクラブハウス。
外も、夕焼けが星空に変わってきている。


「早く来ーい、椿くーん」


小さく呟いてみる。
すると、遠くから足音らしきものが聞こえた。


(もしかして…!)


予想通り、曲がり角に人影が差す。
私は歓喜に胸が震えた。


「やあ。そんな所で何をしているんだい?」


途端に冷める歓喜の熱。
ええ、そうですよ。
随分と歩くのがゆっくりだなって思いましたよ。


「王子こそ何してるんですか」

「この後に約束があってね。時間を潰していたんだよ」


あの多国籍メンバーが頭を過る。


「君は何をしているんだい?」

「私も約束みたいなものです。…ある意味」


身体の力が抜けてしまって、床にしゃがみ込む。
いつになったら戻ってくるの椿くん…!


「今日は元気が無いね、悠莉」

「お腹が減って力が出ません。ぎぶみーちょこれーと」


ハロウィンにはトラウマが出来そう。
だって、現時点であの決まり文句を言いたくない。
早くもなりつつある、と言うことかな。


「懐かしい台詞だね。でも今日のは違うだろう?」

「ハロウィンなんて嫌いです…」

「それはボクも同感かな」


頭にこつんと何かがぶつかる。


「あげるよ。ボクは要らないからね」


器用に乗っけられたソレを手に取ってみる。
美味しそうなお菓子がいっぱい詰まったバスケットだ。


「初めて王子が王子に見えた…!」

「はは、ひどいなあ」


何時間ぶりかに見る食料に目頭が熱くなった。



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