企画 | ナノ
優しさは損?
悠莉から奪った缶コーヒーを飲む。
(保護者とか…ふざけんな)
他の男の名前を2回も出した上に、俺を保護者呼ばわり。
好きな女にこんなことされてキレない方がおかしい。
第一、この缶コーヒーも誰に貰ったんだか。
(本当にムカつく女…)
飲み終わった缶を捨てて歩き出す。
すると、こっちに走ってくる椿が見えた。
「おい」
「わっ…堺さん…」
呼び止めると椿は急ブレーキをかけた。
手にはケーキの箱みたいなのを持っている。
「あ、あの、堺さん…?」
怯えたような目で俺を見てくる。
別に怒らねーよ、と心の中で言う。
「そんなスピードで走ってたら、中身グチャグチャになるぞ」
「え…あっ!」
椿は箱を見て青ざめる。
言われて初めて気付くってどうなんだ。
「下らねーことしてないでさっさと帰れよ」
「ウ、ウス!」
そう言って、また全力で走り出す椿。
…アイツは学習能力が無いのか?
(それにしても、だ)
まったく、自分の甘さが嫌になる。