企画 | ナノ
アメとムチ
「悠莉、どうした?」
「…緑川さん…」
廊下でしゃがみ込んでいると緑川さんに声を掛けられた。
今度こそ救世主に見えるけど、世良くんの事もあるし油断出来ない。
「もう騙されません、何も信じませんー!」
そう叫ぶと、緑川さんは呆れたように笑った。
「俺は子どもの遊びには付き合わないぞ?」
「…ドリさん!」
その一言に警戒心を打ち砕かれて、抱きついた。
ついでに事情も話した。
*** *** ***
「元はと言えばお前が悪いな」
「出来心だったんです。恒例行事したかっただけなんです」
未だに帰ってこない椿くん。
…年甲斐もなくこんな事やったのがダメだったのかな。
そんな後悔で俯くと、頭の上に手が置かれた。
「ま、こんな所に女一人残していく若手の連中もどうかと思うがな」
事情がどうあれ、と付け足す緑川さん。
今度こそ優しさが身に沁みる。
涙が出そうになって、もう一回抱きついた。
「さすがベテランですー!!」
「…関係あるのか、それ」
緑川さんが本当の救世主でした。