企画 | ナノ
Sister Side
何であの人出掛けないの!?
クリスマスなのに信じられない!
男ならフラグ立てて来い!
呪いにも似た想いを込めて視線を送る。
それには気付いたみたいだけど一向に席を立たない兄さん。
むしろこっちを見つめ返してくる。
「はぁ…」
「人の顔見て溜息つくなよ」
したくもなるよ。
私は今日の為に計画を練っていたんだから!
午前中はかのんちゃんのコンサートを見てテンション上げて!
午後はアマ●ンで届く予定のゲームを攻略する予定だったのに!
(誰かが家にいるなんて思わなかった…)
両親は出掛けるって聞いてたし、兄さんだってどこかに行くと思ってた。
エロゲだったら家の中でも充分だけど。
三次元なら、外に出てこそのクリスマスだ。
(家の中でのクリスマスは私みたいなオタクの特権なの!)
だから家という快適な環境は妹に譲ってほしい。
もう一度じっと見つめると、兄さんが諦めた様子で立った。
(勝った…!)
憚らずガッツポーズをする。
胸の中が喜びで満たされる…はずなのに。
(ちょっと寂しいとか、ないよね)
一人になったリビングにテレビの音だけが響く。
内容もつまらなく感じてチャンネルを回す。
「あーあ…」
「悠莉、暇ならイルミネーション見に行かねえ?」
急にテレビ以外の音が聞こえた。
兄さんの声だ。
振り向くと、上着を羽織った兄さんがいた。
「イルミネーション…?」
「駅前のスゴイらしいじゃん」
考えもしなかった選択肢が兄さんから飛び出す。
驚きで素直になれるほど子供じゃない。
兄妹で行くのか、とか野暮なツッコミだって浮かぶ。
だけど、私は自分で思うよりずっと素直だったみたい。
「行くっ!」
最初から一人で居たなら大丈夫。
二人から一人になったら少し寂しい。
一人で出るのは尻込みする外も。
兄さんが居るならきっと怖くない。
午後に来るはずのゲームとか今はもういい。
一度狂った予定は立て直せない。
だから全く違うイベントも良いかもしれない。
今年だけだから。
こんなクリスマスもあって良いよね?