企画 | ナノ
読み勝てない


椿くんを待つ為とは言え、変な場所に立ち止まっている。


(すっごく気まずい! 早く帰って来て、椿くん!)


「何やってるんスか、そんなトコで」

「…赤崎くん」


ああ。一番会いたくない人物に遭遇。


「俺だってそうですよ」

「心を読まないでくれるかな」

「そんで、一体どうしたんスか?」


珍しく食いついてくるので、仕方なく話すことにした。


*** *** ***


「自業自得ッスね」

「そうなんだけど。一言目がそれってどうなの」

「事実ですから」


黒田さんがイラつく気持ちがよく分かる。


「他の男のこと考えました?」


もう何も考えない。


「そんじゃ、そこでアホみたいに突っ立ってて下さい」

「君は鬼なの?」

「悠莉さんがアホなんですよ」


そう言って本当に立ち去ろうとする赤崎くん。
この人、何しに話しかけてきたんだろう。


赤崎くんとのやり取りを思い出して、何となく腹が立つ。
遠くなっていく背中に向かって叫んだ。


「赤崎くん、トリックオアトリート!」


他に誰もいない廊下によく響いた。
赤崎くんが相変わらずの無表情で振り返る。


「え、わっ…」


遠くから投げられた物を辛うじてキャッチする。


「仕返し出来なくて残念でしたね」


どこまでも読まれていて腹が立つ。


「じゃ、そこでアホみたいに突っ立ってて下さい」


さっきと同じ台詞を吐いて、今度こそ本当に行ってしまった。
相変わらずのカッコつけ…なんだけど。


「お菓子は意外だったかも」


それがゴミだと気付いて叫ぶまで、あと10秒。






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