企画 | ナノ
夕闇に融ける幸せのカタチ
夕飯の材料を買いに悠莉と近所のスーパーに来た。
と言っても、真剣に材料を選んでいるのは俺だけだ。
悠莉は食材そっちのけで菓子売り場に飛んでいった。
食材を選び終わってから、悠莉が居るであろう菓子売り場に向かう。
「堀田さん、ポッキーの日ですって!」
俺の姿を見つけるなり、ポッキーを片手に走り寄ってきた。
そして俺が何か言う前にそれをカゴに入れた。
*** *** ***
「ポッキー買ってもらっちゃいましたー」
帰り道。
悠莉はポッキーだけを入れたビニール袋をぶんぶんと振り回す。
子供かコイツは。
「そんなしたら中身が粉々になるぞ」
「えー?」
どんどん前を行く悠莉には聞こえにくかったようだ。
かと言って、もう一回言う気にもならない。
「堀田さーん!もっと速く歩いてくださーい」
袋を持った方の手を上げて大きく振る。
そんな悠莉に思わずため息が出てくる。
悠莉はいつだって元気だ。
どんな環境でも、隣にいるヤツがどうであろうと。
自分で楽しくする努力を怠らない。
悠莉のそんな明るさにいつも助けられてる。
「そんなにソレが嬉しいのか?」
「それもそうですけど」
隣に追いつくと、止まっていた悠莉が歩き出す。
少し歩調を落したようにも思えた。
隣をゆっくりと歩く悠莉が俺を見上げてくる。
その瞳は真剣だった。
「どんな嬉しさも、堀田さんが隣に居ないと意味ありませんから」
そっと俺の手を握ってくる悠莉。
俺はその手を強く握り返した。
「俺もだよ」
お互いに照れくさくて笑ってしまう。
だけど、そんな時間が一番大切なんだ。
*** *** ***
「ポッキーが粉々ですよ!?」
「………」
ポッキーは案の定粉々で、悠莉の叫びだけが虚しく響いた。