企画 | ナノ
負けず嫌い
「ご機嫌だな、悠莉」
「八谷さん」
廊下をスキップ気味に歩いていたら話し掛けられた。
「ネルソン監督が飴をくれたんです」
「ボスがか!?」
「はい」
派手に驚く八谷さん。
つくづく思うけど、川崎ってテンション高い人が多いな。
私もだけど。
「一体どういう経緯で貰ったのか詳しく教えろ、悠莉ー!」
その中でも、八谷さんはトップレベルだ。
心からそう思う。
「ハロウィンだからくれたんですよ」
「そうか!今日はハロウィンか!」
「そうですよー」
わなわなと震え出す八谷さん。
いつもの事だと気にしないでいると、いきなり肩を掴まれた。
「よし! 悠莉、この後は俺に付き合え!」
「…え?」
とっても嫌な予感。
肩を掴む力が強くなっていく。色んな意味で怖い。
「俺がボスより良い物をプレゼントしてやる!」
「あ、あの…」
返事を渋っていると、今度は腕を掴まれ、引っ張られる。
「ははっ、今夜は帰さんぞ!」
ちっともロマンティックな響きがしない台詞。
嫌な予感を胸に抱いたまま、私は八谷さんに引っ張られていく。
そんなこんなで、災難だらけのハロウィンは終わった。