企画 | ナノ
大人と子ども


「星野さん、お菓子ください」


練習を終えて帰ろうとしている星野さんを捕まえる。


「お前は何歳だ?」

「22歳です!」


即答するとほっぺを引っ張られる。


「いひゃい、いひゃいれす」


抗議するもスルーされる。
そんなに頭に来ることを言っただろうか。


「らってきょーはハロウィンれすよ」

「日本語でしゃべれ」

「ひゃあはなしてくらさい」


やっと手を離される。
ヒリヒリと痛む頬を手で押さえた。


「ハロウィンってのは子どもの行事だろ」

「…そうですけど」

「いい歳した大人がやるんじゃねーよ」


正論なんだけど、本当にノリが悪い人だ。


「悠莉ー!ハロウィンッテナニー!」


日本語がほぼ通じない、間の悪い人がやって来た。


「大人が子どもにお菓子をあげる日だよ」


昌珠に分かるように、一言一言はっきり言う。
そのせいで星野さんへの嫌味みたいに聞こえてしまう。


案の定、星野さんは難しい顔をしていた。


「悠莉ニオカシアゲルヒー?」


そんな気まずい雰囲気をぶち壊す一言。
星野さんが笑いを堪えているのが見える。


昌珠にきっと悪気は無い。
分かってる。


だからもう開き直る。


「そうですよ! だからお菓子下さいっ」

「…っ、くくっ…」

「悠莉、ワタシセーカイ!?」


悲痛な叫びと、堪えた笑い声と、陽気な声。
そんな声が入り混じる、川崎フロンティアのハロウィン。






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