企画 | ナノ
カッコつかないエンディング
「そんでソレを俺と食べる、と」
突然の登場に思わず二人で固まる。
「達海監督?」
「俺の部屋で食おーぜ。ほら行くよ」
私からケーキ箱を強奪して歩き出す達海監督。
椿くんは素直に数歩後をついて行ってる。
(え、そういう流れなの?)
立ち止まったままでいると、椿くんに不思議そうに振り向かれた。
「露雪さん?」
そうだよね。あのケーキは私が貰ったんだもん。
*** *** ***
「うっわ、グチャグチャじゃん」
「スイマセン…」
「ま、切り分ける必要なくて良いんじゃねーの?」
それはもう見事に、原型を留めていないほど崩れていた。
私たちは取り皿もなく、各々のスプーンで好きな分量をすくう。
「悠莉と間接キスだなー椿」
「なっ…!?」
「それを言ったら監督と椿くんもですよ」
「残念だったなー椿」
私にお菓子を買いに行かされたり、
達海監督にからかわれたりで、椿くんは私以上に厄日だ。
しょんぼりとしている椿くんに心の中で同情する。
「椿くん、バレンタインは期待してて!」
「え…」
「今日のお礼に私頑張るから!」
今からお金を貯めて高級なチョコを買おう。
来年だからどうにかなるはず。
「若いって良いねー」
達海監督のそんな言葉で、今年のハロウィンは幕を閉じた。