妹変 | ナノ
ウーピンはハイリスク


「ロン」


緊迫した雰囲気の中で倒牌の音が響く。


「ウーピンはさっき兄さんが…」

「一巡してるからフリテンじゃねえぞ」

「…っ」

「さっさと点棒よこせよ」


ただでさえ手持ちが少ない鏡花に容赦なく催促する赤崎。
赤崎に関しては異様に沸点が低い妹が再びキレた。


「なにノドカちゃんみたいな手を使ってるんですか!」

「気持ち悪い例えすんな」

「せめて咲ちゃんみたいにツモれ!プラマイゼロだけ狙ってろ!」

「それじゃ勝てねえだろ」


こうなると長い。
俺は横にいるおじさんに何度目か分からない謝罪をする。


「ホント妹がスイマセン」

「構わないよ。それに怒ってる鏡花ちゃんなんて珍しい」

「俺も初めてッス」

「兄妹喧嘩はしない方なの?」


言われてみれば、もう何年もしていないような気がする。
目の前の赤碕と鏡花の方が兄妹に見えるくらい、してない。


「そもそも話しが合わないっていうか…」


話しが合わない二人が今まさに喧嘩を繰り広げている。
適当な誤魔化しはきっと言い訳にもなってない。


泳いだ視線がおじさんを捉えた一瞬に、優しい笑顔が見えた気がした。


「それでも仲が良く見えるよ」


その言葉に、鏡花がこの人と仲良くしてる理由が分かった。
多分アイツはこういう人が好きなんだ。


「でも俺、兄貴らしいことできてないし…」

「鏡花ちゃんは頼りにしてるよ」


見透かされてるんだけど、全て包み込むような言葉。
俺は多分、こういう兄貴になりたかったんだ。


でもきっとなれないから。


「兄さんの番だよ」


いつの間にか勝負に戻っている妹に急かされる。
気付いたら目の前にはいつのまにか牌が並べられていた。


「兄さん速く!」


お互いに憧れがあって、それと現実は違うかもしれない。
だけど、鏡花の兄貴は俺だけなんだ。


「マージャンで長考はNG!」


サッカーでも何でも、考えは早くまとめないとな。


「分かってる!」


兄貴だけどマージャン初心者の俺は、最下位になる努力でも始めるか。




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