妹変 | ナノ
過ちの原因は妹の笑顔


「また負けたー!!」


帰宅すると妹の叫び声で迎えられるのは珍しくない。
リビングでゲームをする鏡花が居るのも、いつものことだ。


「…何してんの?」

「美少女麻雀!」


妙な単語が返ってくるのもいつものことだ。
ただ、リビングにある家族共用のパソコンを使っているのは珍しい。


「ノーパソ壊れたとか?」


何故か鏡花は自分専用のノートパソコンを持っている。
家族の誰かが買い与えたわけじゃないのに不思議だ。


「別に壊れてない」

「じゃあ何で?」


鏡花はいつもパソコンゲームは自分のノーパソでやっている。
リビングでは、テレビを使うゲームしかしてなかった。


なのにどうして。
いつもと違う事をされるとやっぱり気になる。


「私のパソコンは……あ、音羽さんの魔法きた!」

「え、なに!?」

「もう晩ご飯抜きでいいからロンさせてよ…」


鏡花ががっくりと落ち込んでいる。
画面を覗いてみると、満面の笑みのキャラクターがいた。


って、そうじゃない。
さっきから話しがちっとも進んでない。


「そんでノーパソは?」


鏡花が顔を上げる。
だけど俺を見ることはなく、再び画面に向き直っただけだ。


「プレミアムモードと褒章回収に充ててるから使えない」

「…何だよそれ」

「聞きたい?」


鏡花が初めて俺を見る。
その目はいつものように輝いてはなくて、何ていうか興味なさ気だった。


首を横に振ると思われてるんだろうか。
何かそれはそれで悔しい。


「…分かりやすく頼む」


負けん気でそう答えると、鏡花の瞳が少しだけ驚きに揺れた。
そして喜びの表情へと変わっていく。


「うん!」


さっき見た画面の中のキャラクターにも負けないくらいの笑顔だ。


鏡花風に言うと、選択肢を間違えなかった、ってヤツか。
こんなのも悪くない。




そう思った10分後に。


「というワケなの。わかってくれた?」

「…うん…」


一度は正解だと思ったその選択肢を悔やむことになる。




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