妹変 | ナノ
独り言注意報


家に帰るなり真っ先に自室を目指す。
荷物を床に投げ、ベッドに腰を下ろした。


帰ってくるまでに一度も反応のなかったケータイをポケットから出す。
相変わらず着信はない。


(何でメールしてこねーんだよ、アイツ…)


アドレス帳を開いて今日登録されたばかりの名前を眺める。


『世良 鏡花』


その名前を呼んだことは一度もない。
呼ぶ機会もなかったし、必要ないと思ってた。


だからこうしてフルネームで登録しておくのに違和感が生じる。


「低スペック妹…で良いか」


アイツとのやり取りから思いついた名前。
適当にしてはよく出来ていると我ながら感心する。


その名前で登録し直す。
変更終了の知らせが出て再び待ち受け画面に戻る。


それでもアイツからのメールは来ない。
更に言うと、このまま待ってても一生来そうにない。


(譲歩してやるか…)


仕方なく新規メール作成画面を開く。
そして本文にたった一言。


遅えぞ。


それだけ入力して送信ボタンを押す。
送信が完了したのを見届けて、返信には期待せずにケータイを閉じた。


「ん…?」


まだ手の中にある閉じたばかりのケータイが震える。
まさか、と思う。
画面にはさっき登録した『低スペック妹』の文字が映し出されている。


「…マジかよ…」


返事が来ると思ってなかったから、内容なんて想像がつかない。
逸る気持ちを認めながらボタンを押す。


『礼儀<美少女!』


そんな件名だけで、本文なしのメールだった。


「…はっ…」


ちゃんと人の言うこと聞いてんじゃねえか。
そう思ったら笑いが込み上げてきた。




ここで普通の反論でもして来たら、名前で登録してやったのにな。




心の中で呟いてケータイを閉じる。
アイツの登録名は『低スペック妹』のままだ。


だが、それもきっとそう遠くない内に変わるだろう。




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