妹変 | ナノ
子どものケンカ注意報


家に入るなり、リビングを素通りしていく赤崎。
まるで家の構造を知っているかのように一直線に進んで行く。


「おい赤崎!?」

「…こっちか」


赤崎が鏡花の部屋の前に立つ。
そして迷わずにその扉を開けた。


「うっわ、気持ち悪ぃ部屋」


信じられない行動と有り得ない第一声。


部屋の主である鏡花は相当驚いている。
声も出ないって感じだ。


「お前ホントに女子高生かよ」


そんな鏡花の様子にもお構いなしで部屋に入る赤崎。
部屋を埋め尽くすマニアックなグッズにも怖気づいてないようだ。


「どうしてあなたが…」


少し経って正気を取り戻した鏡花が声を発する。
その声は怒りと言うより、疑問を含んだ響きだった。


「お前の兄貴に招かれた」

「…兄さん…」


鏡花の声に怒りの感情が含まれる。
しかも俺向けに。


(だから誤解だー!)


首を横に振って否定するが、鏡花には届いていないようだった。


「何だこれ」


いつの間にか赤崎が、椅子に座る鏡花の元に辿り着いていた。
鏡花の正面にあるノーパソを指差す。


「何でもないです」


鏡花が不機嫌そうに答えてマウスを動かす。
赤崎はそんな鏡花に顔を顰めた。


「っ!?」

「教えろよ」


赤崎が鏡花の手の上に自分の手を重ねる。
鏡花は驚きよりも先に嫌悪の表情を示した。


(女の子としてそれはどうなんだ、そんなに嫌いか!?)


何て相性の悪さだ。
今日が二回目の接触なのに。
人ってここまで仲が悪くなれるものなのか。


「出てって下さい!」


鏡花が立ち上がって赤崎の体をぐいぐいと押す。
宣言通りに出口に追いやろうとしているようだ。


(どうすりゃいーんだ…?)


悩んだ末、扉付近に立っていた俺は一歩下がった。
だって一緒に赤崎引っ張るのも変だし。


少しずつこちらに向かってくる二人を待つ。
しかし、それはしばらくして止まった。


「どうしたんだよ」

「……!!」

「部屋なんかに篭ってるから力弱いんだよ」

「………!!」


赤崎が鏡花を挑発する。
鏡花はそれに乗せられて必死に赤崎を押す。


赤崎は鏡花側、つまり進行方向と逆に体重をかけているようだ。
だから進まなくなった、と。


…大人気ない。
この二人すごく大人気ない。


「…お前ら仲良いな」

「どこが!?」


真っ赤な顔をした妹の怒声が響いた。



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