妹変 | ナノ
レベル不足警報
赤崎がまた俺の家に来たいと言い出した。
何とか断ろうとしたが押し切られた。
(鏡花との約束だし、連絡しねーと)
仕方なく携帯電話を手に取る。
すると上からそれを取り上げられた。
「…っ何だよ!?」
「アイツに連絡するつもりでしょ」
思わずぎくっとする。
やっぱり、と小さな呟きが聞こえた。
「まあ良いけど。アイツ今日も家に居るんスね」
そう言いつつ俺の携帯を自分の鞄にしまう後輩。
もうツッコミが追いつかない。
妹の怒り顔が目に浮かぶ。
鏡花と赤崎がまた顔を合わせたらどうなるかも。
(年長者としての俺の威厳は一体どこへ行くんだ…)
同じ状況のゲームをやったことがある。
モンスターのレベルだけを上げてると言うこと聞かなくなるんだ。
(アレってジムのバッジを取らないとダメなんだよな)
なんて懐かしい回想に浸りたいけれど、恐ろしい現実が迫っている。
生意気な後輩と変な妹。
どっちも俺の言う事なんて聞きやしない。
(現実もあのゲームくらい分かりやすけりゃ良いのに)
どこかでバッジを貰えるなら、多少の危険を冒してでも取りに行く。
それでアイツらが言う事を聞くようになるなら。
(まあ、そんな簡単に行かないから困ってるんだけど)
颯爽と歩き出す後輩の後について行くのが、今の俺の現実だ。