妹変 | ナノ
話すな危険


ピンチは続いている。


「アンタどんな教育してるんですか」

「な、何がだよ…」

「挨拶も出来ないんですか、この妹」

「お前もだろ…」


赤崎のその一言で妹の負けん気が呼び起こされたようだ。


鏡花がお茶を注いでくれた。
雑巾でも絞ったような雰囲気だけど、ちゃんとお茶だ。


「サンキュ、鏡花」

「別に。妹なら当然なんでしょ」


部屋に戻ることは逃げだと思ったらしい鏡花が席に着く。


ヤバイ、事態が際限なく悪化していく。
どうにかして流れを変えないと。


「鏡花。コイツは後輩の赤崎」

「後輩…?」

「それでもお前よりは上だから」


二人の間に音を立てて亀裂が入る。


自ら墓穴を掘ってしまった。
いや、実際に掘ったのは赤崎だけど。


「つーか何で俺のこと知らないワケ?」


その台詞に鏡花は怪訝そうな顔をした。
赤崎はそんな鏡花を見ながらも更に言葉を続ける。


「試合見てたら知ってるはずだろ」

「…サッカー見ませんから」

「はあ? お前それでも妹かよ」


どうしてお前はさっきから余計なことしか言わないんだ。
わざとやっているようにしか見えない。


加速度的に悪化していく事態は決して収束しない。
それは俺の妹が退かないからだ。


「幻想抱かないで下さい。同じ親から生まれたってだけなんですから」


お前も応戦しなくていいから。
頼むからもうやめてくれ。


「お前に話合わせてやってんだろーが」

「誰がそんなこと頼みました?」

「お前の兄貴に頼まれたんだよ」


今まで蚊帳の外だった俺が強制的に参加させられる。
俺を咎める鏡花の視線が痛い。


誤解だ!俺はそんなこと頼んでない!


「ゲームにどうこう言うくせに自分自身はスペック低いとか最悪だな」

「なっ…!」


それは言っちゃダメだろ。
そんなこと言ったら世の中の解説者は全員廃業だろ。


俺の隣に座っている鏡花は怒りに震えている。
取りあえず落ち着けようと手を伸ばすと、その手を強く握り返された。


「兄さん、私ちゃんと妹できてるよね?」


えええ。そう来るのか。


「ま、まあ俺の妹だけど…」


俺の返答に鏡花はほっとしたような笑顔を浮かべる。
そして赤崎を見て得意げに胸を張った。
赤崎はそれを鼻で笑う。


「同じ親から生まれただけの、な」


してやったり顔の赤崎。再び殺気立つ鏡花。その間に挟まれる俺。


これで構図もハッキリした。
史上最悪のティータイムはまだ始まったばかりだ。



「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -