妹変 | ナノ
Nursery☆Pillow
練習を終えて帰宅。
両親と妹は既に夕飯を食べ始めていた。
「俺の分ある?」
「用意しとくから荷物置いてきなさい」
母親とそんなやり取りをして自室に向かう。
(荷物置いて、手ェ洗って…)
頭の中で行動を組み立てる。
ちらりと見えたメニューのことも考えたりする。
だが、部屋のドアを開けた時に全て吹っ飛んだ。
*** *** ***
「何だよこれっ!!」
リビングで悠然と飯を食べる妹に詰め寄る。
俺が抱えた物を見て鏡花はしまったと言う顔をした。
「に、兄さんの趣味って特殊…ですね」
「人を変質者にすんな!」
何故か今回に限って変に取り繕う鏡花。
視線が思いっきり泳いでいる。
「何で俺の部屋に置くんだよ!?」
抱えてたソレを床に投げる。
鏡花は慌ててソレを拾い、大切そうに抱きしめる。
コレの持ち主が誰の目にも明らかになった瞬間だった。
「クルルちゃんに何するの!?」
開き直ったらしい鏡花に涙目でキッと睨まれる。
だが今日は俺も退けない。
『俺の部屋に二次元幼女キャラクターの抱き枕があった』
そんな事実を認めるわけにはいかない。
鏡花の仕業だとハッキリさせておかないといけない。
…既に両親の視線が痛いがそこは気にしない。
「何かの嫌がらせかよ!?」
「そんなことに美少女は使わない!」
「じゃあ何だよ!?」
鏡花が珍しく言葉に詰まる。
枕を抱きしめる腕に少し力が入ったのが見えた。
「ロリコンに厳しい今の世の中じゃベランダに干せないもん…」
さっきまでの威勢はどうした。
一転して弱々しく呟く鏡花。
いつも通りのどうしようもない理由。
謝られてだっていない。
なのに許してやりたくなった俺は甘いんだろうか。
「分かった。今日のは許すから次は…」
「私の部屋は日光を遮る物がたくさんあるから無理なの!」
鏡花が叫ぶ。
塞き止められていた何かが溢れ出すようにその叫びは続く。
「規制だの何だのでホントに肩身が狭いんだよ!」
「幼女を傷つけるヤツにロリコンの資格なんてない!」
「真のロリコンは、幼女を見守るものなんです!」
その幼女がプリントされた枕を抱えて熱弁する鏡花。
なあ、そろそろ両親の視線に気付こう。
よく見たら母親が泣きそうだ。
なのに妹をどうにもできない俺は無力だ。
「来いよアグ●ス!!」
「何故ア●ネス!?」
その後も抱き枕を片手に鏡花の演説は続いた。
ソレを止められる人間は、俺を含め一人も居なかった。