妹変 | ナノ
兵の道。
怪し過ぎる店を出て、俺達は更に暗い路地へと進んで行く。
俺はあの店の雰囲気に当てられてどっと疲れた。
だが、鏡花は逆に元気になっている。
アレをエネルギーに変換できる妹を心の底から尊敬する。
「兄さん、次がゴールだからしっかりして」
鏡花がぐっと拳を握って俺を励ます。
動作はいちいち可愛いんだよな。
「今度はあそこより濃くないんだよな?」
「濃いよ」
その言葉で一気に突き落とされる。
嘘をつかないのは妹の長所でもあるが、時と場合ってモノがある。
俺は項垂れながらも辛うじて鏡花の隣を歩く。
鏡花はそんな俺に気付いたのか、くすりと笑った。
「心配しないで」
優しさに満ち溢れた発言に顔を上げると、鏡花のいい笑顔があった。
ああ、嫌な予感。
「次の店は猛者ばっかりだから!」
逆に心配なんだけど。
精神的に疲れすぎて声が出ない。
そのツッコミは俺の心の中だけのモノとなった。