妹変 | ナノ
18時になるまで待って


ちょっとした休憩のつもりが、結構長く店に滞在してしまった。


妹と話しが弾んだのは喜ぶべきことだ。
だけど俺は当初の目的を思い出す。


元々は、鏡花がテストを頑張ったご褒美を買いに来たんだ。
それがこの街だと探しやすいからここに来たワケで。
目的は観光じゃない。


「鏡花」

「なに?」

「いや、ゲームはいつ買いに行くのかなー…と」


日が暮れ始めても全く焦っていない様子の鏡花。


朝からこの街に居るのに、一度もそれを取り扱った店には行ってない。
一体どういう予定を立ててるんだろう。


鏡花はそんな俺の心配を他所に、強気に笑った。


「兄さん、ここからが本番だよ」


びしっと人差し指を差される。
人を指差しちゃいけません、なんて言いにくい妙な迫力がある。


ああ、いつもの妹だ。


「今までは時間を潰してたの」

「なんで?」

「もうすぐ分かるよ」


鏡花が鞄から携帯を取り出して時間を見る。


「まだ五時半か…」

「え、もう五時半!?」

「あそこに寄ればちょうど良いかな」


俺の存在は無視して予定を組み立てる妹。


まあ、いつものコトだけどさ。
今日一日で随分距離が縮まったと思ったのに。
俺の気のせいか。


「兄さんっ」

「…!」


朝と同じように、抱きつかれた腕を引っ張られる。
不意打ち過ぎてバランスを崩してしまった。


「今度こそ付き合ってもらうからね、兄さん」


悪戯っ子のような笑いを浮かべる鏡花。
やっぱ鏡花には敵わない。


妹に引っ張られて、俺は嫌な予感しかしない道を歩き出した。



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