妹変 | ナノ
うら
「あの…鏡花?」
店で席に着くなり、戦利品を机いっぱいに置いて観賞し始める妹。
買ってきた飲み物を持って来た俺は居た堪れない。
「あ。もう出来たの」
鏡花が気付いて机のスペースを空けてくれる。
俺はそこにお盆を置いて、自分も椅子に腰を下ろした。
飲み物を前にしても観賞をやめない妹。
もうすっかり家にいる気分なのだろう。
それにしても静かな店だ。
人も少ないし明かりも暗めで、とても落ち着いた雰囲気の店だ。
鏡花がここまでリラックスできるのも頷ける。
けど、外でそれは感心できない。
「飲まないの?」
「ここのココアはすぐ飲むと薄いんだよ」
鏡花が頼んだ、まだ手のつけられていないココアを見てみる。
「氷たくさん入ってるけど?」
だから時間が経ったら逆に薄くなりそうだ。
妹の言ってることが分からない。
鏡花はそんな俺の様子を見ると、氷を一つ掬って見せた。
「この氷、色がついてるでしょ?」
「…ホントだ!」
言われて見てみれば、その氷は確かに茶色だった。
思わず感嘆の声を上げてしまった。
「これがココアの素なの。だから溶けるほど美味しくなるんだ」
鏡花がスプーンに掬った氷を俺に差し向ける。
気になったので食べてみた。
「マジでココアだ!」
「でしょ?」
その茶色い氷は濃いチョコ系の味がした。
鏡花は軽く笑いながらスプーンでココアをかき混ぜた。
「この店よく来るのか?」
一連のやり取りで何となく分かったけど、会話をする為にあえて振る。
だが次の瞬間に、俺は話題選択を間違えたと知る。
鏡花は俺の言葉に目を輝かせて、力強く頷いた。
「こうやって戦利品を眺める為にね!」
せっかく飲み物に注意を引けたのに、またグッズに戻ってしまう妹。
ああ、何やってんだ俺は。
「兄さんはホントすごいよ、何でも取れちゃうね!」
妹が言う通り、ゲーセンではたくさんのグッズをゲットした。
俺はUFOキャッチャーで余す所なくスキルを発揮した。
してしまった、と言っても良いかもしれない。
「あ●にゃんのみならず唯ちゃんまで!」
いつものように異様なテンションではしゃぐ鏡花。
果たしてこれで良かったんだろうか。
「尊敬するよ、兄さん!」
まあ、良かったのかな。