妹変 | ナノ
求められるスキル。


「なんでゲーセン?」


今度こそ鏡花が好きそうな怪しげな店に行くのかと思った。
なのに連れて来られたのはゲームセンターだ。


「男の人ってUFOキャッチャー得意なんでしょ?」


妹にキラキラした目でそんなことを言われる。
気が遠くなった。


「…どこ情報?」

「エロゲー主人公は必ずUFOキャッチャーが出来る設定!」


俺の妹はついにゲームと現実の区別がつかなくなったらしい。
もうすぐ変な犯罪とか起こすんじゃないだろうか。


それは食い止めたい。


「鏡花、あのな…」

「兄さんに是非とも取ってほしいブツがあるの!」


間違いを正そうとした俺の言葉は遮られる。
代わりに腕を強く引っ張られて、強制的に入店させられた。


一階のフロアはUFOキャッチャーで埋め尽くされている。
それ自体は別に他のゲーセンでも珍しくないだろう。


問題はその商品だ。


フィギュアとか時計とかマグカップとか洋服とか。
この街ならではの偏ったチョイスだ。


「箱モノが全然取れないんだよ」


鏡花が言う通り、それらは全て四角い箱に収められている。


凝り性の妹が難しいと感じるくらいだ。
当然、それを獲得するのには特別なコツがある。


「このあ●にゃんフィギュアが欲しい」

「買えば良いんじゃ…」

「店じゃ売ってないの!ゲーセン特別版なの!」


またも言葉を遮られて熱弁される。


ゲーセンでしか手に入らないモノもあるのか。
オタクの世界も大変なんだな。


そんな風に思ってしまう俺は妹に甘いんだろうか。


「よーし、絶対取ってやる!」

「お願い兄さんっ」


UFOキャッチャーは高校生の時にやりこんだ事がある。
その感覚は多分今でも忘れてない。


俺は財布から100円玉を取り出して機械に入れた。



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