妹変 | ナノ
好感度+2
「さ、それじゃあ行きますか!」
鏡花がそう意気込んで外へと踏み出す。
俺も意気込みはしないが、後に続く。
「今度は休憩なしでガンガン行くよ」
鏡花がとびっきりの笑顔で振り向く。
やっぱり、この街での妹は普段よりずっと生き生きしている。
そんでインドア派のくせに俺より体力があるみたいだ。
なんと言うか結構へこむ。
普段の情熱が、この街では体力に変換されているんだろうか。
「じゃあ飲み物とか買っといた方がいい?」
俺は視界に入った自販機を指差す。
鏡花は意外そうな顔をした後、カバンの中からペットボトルを取り出した。
「わざわざ買うの勿体無いし、私のあげるよ」
そんなに大きく見えないそのカバンのどこに入ってた?
と、ツッコミを入れたい。
「…準備いーんだな」
「オタクの間では常識なの」
俺は鏡花の手からペットボトルを受け取る。
キャップに手をかけると、思ったより手応えがなかった。
「これ開いてる?」
「うん。さっき少し飲んだから」
臆すことなく淡々と答える妹。
いや、ちょっと待て。
じゃあこれって、もしかしてそういう事になるんじゃないか!?
「兄さんってそーゆーの気にする方だった?」
「え、な、何が!?」
「…そんなに動揺されても困るんだけど」
全て分かった上で鏡花がしたことに驚いてしまう。
でもそうだよな。
鏡花と俺は兄妹なんだから、意識する方が変なんだ。
「サンキュ。もらうな」
キャップを開けて口をつける。
甘い炭酸が口の中でぱちぱちと弾けた。
「相手が兄さんじゃなくて美少女ならビッグイベントなのになー」
この街でもいつも通りでいられる鏡花はすごい。
俺はいつもとは何か違うみたいだ。
自分でもよく分からないけど。