妹変 | ナノ
True route


鏡花のことだから、もっと変な店に連れて行かれるかと思った。
なのに目の前の店は至って普通だ。


「兄さんはここ好きだったでしょ?」


その台詞はもっと意外だ。
鏡花が俺の好きなモノを覚えてるなんて。


それが嬉しくて、堺さんのアドバイスは今だけ忘れることにした。


「兄さん、コレありがとね」


席に着いて注文を終えると、鏡花が先ほどの袋を取り出す。
嬉しさに恥ずかしさが少し混じったような笑顔だ。


「良いって。大事に着ろよ」

「…うん」


鏡花がTシャツの入った袋を大切そうに抱きしめる。


(やばい…可愛い…)


こういうトコ素直で、ヘタに見かけが良いから困る。


「あ、裸になって何が悪いTシャツは兄さんのだからね」


俺の妹は何か余計なモノが一つ多い。
変な趣味とか、妙なセンスとか、ムード壊す台詞とか。


「お待たせしました」


他の客がほとんど居ないからか、すぐ食事が来た。
鏡花はいそいそと袋をカバンの中にしまった。


「いただきます」


律儀にそう言って箸をつける鏡花。
けど、俺は現物を前に少し迷ってしまう。


「兄さん?」


鏡花が心配そうに俺を見つめる。
俺は慌てて笑顔で取り繕った。


秋葉原探索は思ったよりハードだ。
だから大丈夫だ。
むしろ食べておかないと持たない気がする。
食べた分きっちり消費できそうなほど午後は歩く気がする!


そう言い訳して、俺は久し振りの脂っこいモノを口に運んだ。



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