妹変 | ナノ
妹ナビ☆
「じゃあ次は…」
「鏡花、ちょっと待って」
兄さんに呼び止められる。
何だろうと振り返ると、お腹に手を当てた兄の姿。
「腹へらない?」
ジェスチャー通りの台詞。
私はカバンから携帯を取り出して時刻を見る。
「秋葉原に着いてからまだ一時間しか経ってないよ?」
まだ店も二つしか入ってない。
どこにもお腹がへる要素なんてない気がする。
「そうだけどさ、なんかこの街は疲れるっていうか…」
そっか、兄さんは初アキバなんだった。
確かに初心者にはこの独特な雰囲気はキツイかもしれない。
私はもう一度、携帯の時計を見る。
そして頭の中でスケジュールを組み直す。
「じゃあお昼にしよっか。早い時間ならどこも空いてるだろうし」
兄さんの表情がぱあっと明るくなる。
何だか犬に餌を上げた気分だ。
「色んな店あるけど、兄さんは希望ある?」
「うーん…」
「上級者に任せてみる?」
すかさず言った台詞に、兄さんが不安そうな目を向ける。
その目にはもう慣れっこだ。
「まあ任せてみてよ」
兄さんの返事は聞かない。
私は頭の中にはっきりと浮かんでいる目的地へ歩き出した。