妹変 | ナノ
兄は承認せず!
「次の景品交換まであと4000ポイントか…」
鏡花が店を出た所でレシートを見ながら呟く。
内容はさっぱり不明だが、きっと常連には色々あるんだろう。
「次はどこ?」
つーか、今の所ゲームと関係なかったよな。
鏡花が買ってた漫画も普通のやつみたいだし。
「すぐ隣だよ。と●のあな男性館」
鏡花が言う通り、隣に全体的にオレンジ色の店がある。
入り口すぐの店内案内図には確かに「男性館」と書いてある。
またも当たり前のように入ろうとする鏡花の肩を掴んで止めた。
「…兄さん?」
「お前どこ行こうとしてんの!?」
色んな意味で妹の最終的な行き先を知りたい。
「同人誌フロア。キツイけど階段で行こうね」
いい笑顔でそう言って店内に入ろうとする。
俺はまた肩を掴んで引き戻す。
鏡花が不服そうに俺を睨んだ。
「付き合ってくれる約束でしょ?」
「こんな所に妹を入らせる兄貴がいるか!」
視線を店内案内図へと向けると、怪しい単語がいくつも見えた。
「兄さんが一緒なら大丈夫だよ」
「そんな問題じゃない!」
小声でのやり取りだが、店前で揉めてることには変わりない。
さすがに周りの視線が痛い。
「私だって流石にここは一人じゃ入りにくいんだよ!」
いきなり涙目の鏡花にギョッとする。
内容が内容なのに、何故かこっちに罪悪感が込み上げてくる。
「だから兄さんと一緒ならって…楽しみにしてたのに…」
大きな瞳を涙で潤ませる妹。
内容は変だけど、台詞と仕種だけは可愛い。
だけど心を鬼にする。
兄貴として社会人として、これは絶対に妥協しちゃダメだ。
「とにかくここはダメ!他なら付き合ってやるから!」
鏡花の手を引っ張って歩き出す。
とにかくココから離れたかった。
「こっちであってる?」
「う、うん。しばらくまっすぐ…」
急に大人しくなった鏡花に違和感を覚える。
けど、何となく後ろは振り向けなかった。
鏡花の手をもう一度しっかりと握り直す。
見なくても、ちゃんと俺について来てくれてるか確認する為に。