妹変 | ナノ
視点が違う。
入り口がガチャポンで固められている。
と思ったら、ちらりと見える中の方にもガチャポンが並んでる。
「…ここ?」
「うん」
指を差して確認するが肯定の返事が返ってくる。
商品が所狭しと並べられていて通路が狭い。
すれ違う人達も狭そうだ。
この中に入るのは勇気と慣れが必要そうだ。
俺は入り口で立ち止まって中をまじまじと見てしまう。
「いつもはエレベーターで七階まで行って階段を下るんだけど」
「エレベーター…?」
目を凝らして店の奥の方を見てみる。
何かそれらしきものが見えた。その横に階段もある。
「今日は上に用がないから、階段で二階まで行くね」
そう言うと、鏡花は怖気づくこともなく堂々と店内を進む。
これがまた上手く人を避けながら行く。
俺はつっかえつっかえだ。
店奥の階段に着いた時、鏡花は既に一階分の半分を登り終えていた。
だからいけなかったのかもしれない。
「…っ鏡花!!」
「え?」
俺は階段を駆け登って鏡花の腕を掴む。
不思議そうな顔をする妹に俺は小声で叫んだ。
「お前…その、見えるって!危ねーって!」
ミニスカートなんて穿いて来てるくせに無防備すぎる。
周りに俺しか居なかったから良かった。
普段もこんなに無防備なんだろうか。
兄貴として心配になる。
なのに、鏡花は心底呆れた視線を俺に向ける。
「兄さんはどうして上なんて見てるの?」
溜息混じりに言われてハッとなる。
なんか嫌な誤解されてる!
「ちが…っ、俺は兄貴として…!」
「ここはアニメ宣伝ポスターとペーパー見本を見るとこなの!」
俺の必死の弁解は無視。
鏡花は周りの壁に貼られた紙の数々を指差す。
「ここで上なんて見る人いないよ!」
妹から妙な説教を受ける。
俺は様々な脱力感に襲われた。
「これだから一般人は…」
やれやれと言うポーズをして残りの階段を登り始める鏡花。
俺は今度は下を向いて渋々ついていく。
こんなんで今日一日大丈夫なんだろうか。
いきなり先が思いやられた。