妹変 | ナノ
いつか、届く、君の耳に。
この前の試合で怪我をした。
いい機会だと思って実家に帰ることにした。
「やっぱり傘姉は萌えだなー」
平日の昼だと言うのに、居間のテレビで妙なゲームをする妹。
画面には可愛い女の子の絵が映し出されている。
「傘姉ルートは補足ルートとか言われるけど、私は一番好きだよ!」
訳の分からない独り言を大声で言っている。
多分、俺に話しかけている訳ではない。
俺は鏡花と違ってそう言うゲームに興味はない。
女の子に興味はあるが、二次元のじゃない。
俺の趣味は正常だ。
ちなみに両親も正常だ。
だから鏡花の趣味は突然変異と言っても良い。
「さっくん行けー!」
俺が居る事も気にせずテレビに叫びまくる妹。
ここまで感情移入出来るって正直すごいことだと思う。
「それで、兄さんはどうして怪我したんだっけ?」
鏡花が急に話しかけてくる。
いや、中断していた話が再開されたと言ってもいい。
15分くらい前まではその話を鏡花としていた。
鏡花の視線はずっとテレビに向けられたままだ。
普通の感覚なら失礼そのものだが、もう慣れてしまった。
「後ろで椿がフリーだったのに、無理に打ちに行って怪我したんだよ」
「あ、それ私も分かるよ!」
鏡花が俺の方に振り向く。その目は輝いている。
嫌な予感。
「地雷って分かってても踏みたい時ってあるよね」
何の話しだ。
「私にとってのシュガ●パみたいな!」
「なにそれ…」
鏡花は自分の好きな物の話しをする時だけ元気だ。
そういう時は相手が同じ趣味じゃなかろーが関係ない。
そんなんで学校生活とか大丈夫なんだろうかと心配になる。
実際、大丈夫じゃないらしい。
学校に理解者は居なく、孤立しているらしい。
それでも本人は気にしていないみたいだ。
学外には友達(?)が沢山いるらしいし。
兄として正直どうかと思うが、本人が満足そうだからなあ。
見かけは良いのに、全く残念な妹だ。
「兄さんもやってみる?」
「…遠慮しとく」
「でも怪我してて暇でしょ?」
いくら暇でもソレはやりたくない。
その気持ちが最後の一線なんだろう。