妹変 | ナノ
エロゲーマーで妹で
私ってすごいのかも。
連日の一夜漬けで満点が八つも取れた。
普段ろくに学校も行かず、美少女に萌えてるだけなのに。
「カンニングしてないだろうな、世良」
この担任は私に嫌味を言うのが唯一の仕事なんだろうか。
まあ自分でも驚きなんだから他人なら尚更かな。
と、自己完結。
しかし折角の良い気分は害された。
私は鞄から一枚の下敷きを取り出す。
はっぴぃ☆マー●レットの販促用宣伝下敷きだ。
(ああ、ここ●か絵は癒される…)
美少女パワーは凄まじく、青筋を浮かべる教師も目に入らなくなった。
(…まったく…)
何で現実世界ってこうなんだろ。
どこでも誰でも壮絶な足の引っ張り合い。
二次元は違う。
可愛くて優しい女の子がどんな人間も受け入れてくれる。
だから私は美少女ゲームが好きなんだ。
それを現実逃避と言う人にはきっと解ってもらえない。
もっと言葉には出来ない、違う感覚なんだよ。
(兄さんは言わない…)
私の趣味を否定しない。
ありのままを受け入れてくれる。
そんな兄さんだから、私はきっと。
「どうだった!?」
不安と緊張と心配が入り混じったような顔で出迎えられる。
私はそんな兄さんにピースサインを向ける。
「12教科中8教科100点でしたー!」
「鏡花、お前えらい!すごい!」
「エロゲーマーの力を見たかー」
真のエロゲーマーはカンニングなんてしない。
そんなの攻略サイト見ながらエロゲーやるのと同じだからだ。
「それはよく分かんないけど、よくやった!」
自分の事のように喜んでくれる兄さん。
本当に手放しで褒めてくれる。
そんな人が現実世界に居るから、まだここに居られてる。
そう言ったら、兄さんはどんな顔をするのかな。
当分は言うつもりもないけどね。