妹変 | ナノ
妹のみぞ知る世界


今日が答案返却日らしい。
俺はリビングで大人しく鏡花の帰りを待つ。


この四日間、鏡花は大好きなゲームもやらずに勉強していたらしい。
肝心のテストも確かな手応えを感じていたらしい。
なんで断定できないのかって、それはまだ結果が分からないからだ。


あんな真面目な妹は(ゲーム以外では)久し振りに見た。
鏡花はやれば出来るヤツだ。
だからきっと大丈夫だと信じたい。
いや、信じてる。


その為にゲームを買ってやる約束もした。
余計なプレッシャーをかけないように留年って単語も出さなかった。


「きっと大丈夫だ、うん!」


時計を見てみる。
そろそろ鏡花が帰ってくるはずだ。


携帯を見てみる。
連絡が入る気配はない。


センターに新着メールを問い合わせてみる。
うん、0件だ。


「ただいまー」


いつもと変わらない緊張感のかけらもない声。
俺は玄関に駆け出した。


「兄さん、すごい顔…」

「どうだった!?」


鏡花の言葉を遮るような形で叫んでしまう。
俺はそのくらい必死だ。
鏡花が言いかけた通り、顔に出てしまっているのかもしれない。


頼む、留年だけは避けててくれ。
満点なんか取ってなくてもゲームは買ってやるから。
お前がどれだけ頑張ったかは分かってるつもりだから――!




「12教科中8教科100点でしたー!」




無邪気にピースサインを向けてくる。
年相応のような、少し幼いような、何とも言えない笑顔。


俺が今まで見た鏡花の表情の中で、一番可愛いと思った。




「鏡花、お前えらい!すごい!」


抱きしめて頭を撫でてやる。
鏡花はくすぐったさそうに笑った。


「エロゲーマーの力を見たかー」

「それはよく分かんないけど、よくやった!」


鏡花はやれば出来るヤツなんだ。
本来なら、俺の妹にしては出来すぎなヤツなんだ。


こうして結果が伴うと、兄貴としても誇らしい。



「ところで約束は覚えてるよね?」

「もちろん!」


100点なんて無くても、頑張ったご褒美に買ってやるつもりだった。
でも鏡花は期待以上の結果を出してくれた。


8本は流石に財布的に痛いけど、ゲームって一本4千円くらいだろ。
それなら何とかなるだろ。


「エロゲーの相場って一本一万円くらいだよ?」

「……え?」


衝撃の事実に言葉を失った。



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