妹変 | ナノ
頼れる兄の奮闘記


「ただいまー」


大量の紙袋を提げた鏡花が夕方頃にやっと帰宅した。
そのまま自分の部屋に向かおうとする鏡花の腕を掴んで引き止める。


「鏡花、話しがある」


俺の真剣さが伝わったのか、鏡花は文句を言わなかった。
リビングで向かい合うように座って、プリントを差し出した。


「なにこれ?」

「試験の日程だって。クラスの子が届けに来てくれた」

「ああ、もうそんな時期だったの」


その発言で鏡花がどれだけまともに学校に行ってなかったか分かる。
ついでに緊張感が全く無さそうってことも。


それじゃダメなんだ。
卒業できないかもしれないんだぞ。

こればっかりは本人が自覚を持ってくれないとどうしようもない。


「試験は絶対受けて、いい点とること!」


机を叩いてその言葉を強調する。
しかし鏡花は全く怯まなかった。


「ちゃんと受けたってどーせ全部赤点だよ」


衝撃発言をあっさりとする鏡花。

え、あれ?


「実はすごい頭良いとかじゃないの!?」

「私は兄さんと同じ親から生まれたんだよ?」


妙に納得してしまった自分が情けない。


俺も学生の時は成績が良い方じゃなかった。
サッカーに夢中だったからだけど、そうじゃなくてもきっと悪かった。


教科書は呪文だったし、教師の話しは子守唄だった。
はっきり言って、勉強にあまり興味が無かった。
そういう点では俺と鏡花は同じだ。


「それだけならもう行くね」


鏡花が席を立つ。
買ってきたゲームを始めて、勉強なんてしないんだろう。
それじゃ試験を受けたとしてもいい点なんてとれっこない。
留年になってしまう。


兄として、それはどうしても阻止したい。
こうなったら最終手段だ。


「100点取ったら鏡花の好きなゲーム買ってやる」


思惑通り、鏡花の動きがぴたっと止まる。
目を輝かせて振り返ったら成功だ。


「一個につき一本?」


よし、成功だ。


俺は鏡花の問いに頷く。
財布に優しくない提案だが、鏡花にやる気を出させるにはコレしかない。


「その言葉、忘れないでね」


悪戯っ子のような笑顔を見せる鏡花。

そういう顔を見ると、まあ悪くないって思える。



「#幼馴染」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -