妹変 | ナノ
委員長の伝言は別離の味
とある平日の昼間。
珍しく鏡花は家に居ない。
かと言って、学校に行ったわけではない。
『発売日には特典求めてショップをハシゴ!これ常識!』
出発時にそう息巻いていた。
よく分からないけど、鏡花は秋葉原に行ったんだろう。
俺は練習が休みなので家で寛いでいる。
やっぱり鏡花が居ないと家が広々と使える気がする。
い●ともとか見てみる。
うわ、すげー普通の生活してるよ、俺。
「…ん?」
普通の昼ライフを堪能しているとインターホンが鳴った。
鏡花がよくアマ●ンを利用しているから、それだろうか。
「はーい」
俺はハンコを持って玄関へと向かう。
扉を開けると、立っていたのは宅配便のおじさんじゃなかった。
「だ、だれ…?」
鏡花と同じ学校の制服を着た女の子が居た。
鏡花だったら「メガネっ子」とか言って飛びつきそうな女の子だ。
「すみません。ここは世良 鏡花さんのお宅でしょうか?」
やっぱり鏡花の関係者だったらしい。
まさか友達ってワケじゃないだろう。だったら残る可能性は一つ。
「アイツが何かした!? 被害者!?」
「え…何のことですか?」
どうやら違ったらしい。
何か俺が恥ずかしいヤツみたいな雰囲気になる。
「鏡花なら居ないけど、アイツに何か用だった?」
取り繕おうとしてみる。
女の子は空気を読んでくれたらしく、言葉を続けた。
「これ、来週からの試験の日程です」
一枚のプリントを手渡される。
やたらびっしりだと思ったら、各教科の試験範囲が書き込まれてあった。
目の前の子が書いてくれたんだろうか。
お礼を言おうと、視線をプリントからその子へ向ける。
すると、その子は何やら言いにくそうに切り出した。
「今回の試験で点数取らないと卒業できないかもって…先生が…」
今まで漠然と感じていた不安が、急に現実味を帯びた。
「失礼します」
逃げるように走り去る女の子。
俺は玄関先でただ立ち尽くしてしまった。
「…留年…?」
手渡されたプリントを握る手に思わず力が入った。