妹変 | ナノ
フラグミサイラー!
クラブハウスを歩いていると、広報部から悲鳴が聞こえた。
「どうかしたんスか?」
覗いてみると、有里さんが頭を抱えていた。
「パソコンが壊れちゃったのよ!」
「パソコン?」
「そう!お金無いのに〜!」
顔を両手で覆う有里さん。
よく分かんないけど、相当深刻な事態らしい。
「俺、タダで治せるアテがあるかもしれないッス!」
パソコンと言う単語に、思い浮かんだ顔がひとつある。
「鏡花はパソコン得意だったよな!?」
帰宅するなり、リビングで寛ぐ鏡花に聞いてみる。
鏡花は毎日パソコン使ってるし、難しい単語もいっぱい知ってる。
きっとパソコンにも詳しいはずだ。
けど、俺の考えとは裏腹に、鏡花は思いっきり溜息をついた。
「よくオタクって言うと勘違いされるんだけどさぁ…」
本当に疲れたといった感じで重々しく語り出す鏡花。
「じゃあ踊れるんだ、とか、パソコン詳しいんだ、とか…」
「オタクって言ってもジャンルは細かく別れてるの」
「私は美少女オタクなの。他は出来ないの」
鏡花がかったるそうに語る。いつもの情熱はどうした。
「だってゲームでパソコン使ってるじゃん!」
「エロゲーはインストールしたらひたすらエンターキー押すだけ」
「そうなの!?」
初めて知った衝撃の事実。
これも普段、鏡花に近付く努力を怠った罰なんだろうか。
「何かあったの?」
「人に嘘をついてしまったかもしれない…」
勘違いとは言え、俺は有里さんを期待させてしまった。
正直に謝れば良いんだろうけど、この罪は大きくないか?
「それって女の子?」
急に鏡花の目の色が変わる。
言葉にも急に意思が込もったような気がする。
「女の人だけど…どうかした?」
寝転がっていた鏡花が急に元気よく立ち上がる。
何かと思えば、すっごい笑顔で手を差し伸べられた。
「最善を尽くしましょう」
えええ。何このビジネスライク。
「…どうして急に?」
「私は三次元でもフラグを回収する女だよ」
誇らしげにそう宣言する鏡花。
訳が分からないけど、こうなってくれれば大丈夫だ。
妹の才能がついに一般の人の役に立つかと思うと嬉しかった。
それがどんな不純な理由であっても。