妹変 | ナノ
電気の消えた日


部屋で雑誌を読んでいると、急に部屋の電気が消えた。


「きゃあっ!!」


隣の鏡花の部屋から悲鳴が聞こえた。
おかしいな、暗闇とか怖がるヤツじゃないのに。


いつまでたっても電気は復旧しない。
鏡花の悲鳴が気になったので、隣の部屋に行くことにした。


「鏡花、大丈夫…」

「兄さん!」


部屋に入った途端に勢いよく抱きつかれる。
想定外の行動だったが何とか支えた。


「ど、どうしたの…」

「怖いよ!七海ちゃんの呪いだよ!」


良かった。いつもの鏡花だ。
俺は安心して鏡花を抱き返した。

背中を軽くさすってやると、鏡花は落ち着いたようだった。


「怖いゲームやってたのか?」


鏡花が俺の腕の中で懸命に頷く。


「停電が…タイミングばっちり過ぎて…」


それであの悲鳴だったのか。
そのゲームがよっぽど怖かったんだろうなあ。


なんて考えてると電気が点く。
年頃の女子の部屋とは思えない内装がはっきりと見えた。


「電気も点いたし、俺出てくな」


俺は鏡花から手を放す。
なのに鏡花が一向に俺を放さない。


「鏡花?」


名前を呼ぶと、鏡花が潤んだ瞳で俺を見上げた。


「もう少し一緒に居て。ダメ?」


一瞬こみ上げた雑念を無理やり押さえつける。
そして鏡花の頭の上に手を置いた。


「いいよ、俺は鏡花の兄貴だし!」


鏡花に頼られたのは何年振りだっけ。


あのおじさんの顔が過る。
それと、ほんの少しの優越感。


鏡花が一番に頼ってくれるのはまだ俺なんだ。
だから俺は頼れる兄貴でいたい。



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