portrait | ナノ
4日目
奇妙な同居生活をしている。
相手は誰かと言うと、ほぼ知らない男の人。
有り得ない事なんだけれど、自然に受け止めてしまっている。
何だか不思議な魅力のある人だ。
「おはようございます、達海さん」
「ん、おはよ」
まだ半分夢の世界に居るような達海さんに挨拶をする。
おはよう言っても、もう11時なんだけれど。
(朝とか弱かったりするのかな…)
聞いてみれば済むことなんだけど、どうにも話しかけ辛い。
だって達海さんは有名なスポーツ選手だった人。
少し前まではテレビの中だけの人だった。
(そんな人に下らない話なんて振れないよ…)
本人はとってもフレンドリー(?)なのに。
私は何故だか意識してしまう。
それは私がETUのファンだったから?
達海さんの活躍をテレビで見ていて、どんなにスゴイ人か分かってるから?
「ふゆ」
「え、あ…はい!」
急に呼ばれて明らかに動揺してしまった。
達海さんに不審な目で見られてる。
「腹減った。何か食う物ない?」
「サンドウィッチならありますよ」
「それで良い。ちょーだい」
達海さんが普通の人みたいにするから戸惑ってるのかもしれない。
遠い人のはずなのに、すごく近くに感じるから。